アートと呼応し合い感性に訴えるランドスケープ
ポーラ・オルビスグループが所有するビルの建替え事業において、アーティストとの協働により建物の内外に感度の高い人々を刺激するパブリックスペースを創出しました。都心部のオフィス床が供給過多になる中、青山の安定した高台で心地よい光や風を享受できる環境価値を、アートとランドスケープの融合によって可視化することに挑戦したのです。
ホールや保育園を備えた低層部には、隣接する赤坂御所の森に倣った樹林帯を整備し、豊かなみどりに包まれた環境を存在感のあるアートと共に創り出しています。その一角には、移築・復原されたモダニズム住宅の文化財「土浦亀城邸」とともに園庭が配置されました。オフィスで働く人たちだけでなく、保育園に通う子供たちにも感性を刺激する空間や時間を提供したいとの思いから、ポーラ美術館の森で天寿を全うしたケヤキの切株をベンチとして移設・再生したのです。ビルの正面玄関脇に据えられたシムラブロス*による石のベンチと呼応しながら、子供たちの成長を見守ってくれています。また、全てのテナントに開放されるラウンジ機能を備えた屋上庭園には、大山エンリコイサム**との対話を通じて生まれたナチュラリスティックガーデンが、四季折々の表情とともにモノクロのアートと対峙しています。
人工物だらけの都市において、僅かながら残る土や緑をきっかけにして自然の素晴らしさを伝えたいと願い、ランドスケープのデザインに取り組んできました。しかしながら、ランドスケープとパブリックアートが呼応し合うことで生まれてくる、身近な自然への気づきに新たなデザインの可能性を感じています。長きに渡り芸術・文化を支援してこられたクライアントとの出会いが、この嬉しい発見につながりました。そして協働してくれたアーティストたちにも、こころから感謝の気持ちを伝えたいと思います。
事業名 ポーラ青山ビルディング新築工事
所在地 東京都港区南青山2-5-17
用 途 事務所
事業主 ピーオーリアルエステート
設 計 ランドスケープデザイン:ランドスケープ・プラス
建築:安田アトリエ+久米設計
アート アート監修:TAKプロパティ
*シムラブロス
**大山エンリコイサム
***板東優
規 模 敷地面積/ 2465.81㎡ 建築面積/ 1090.76㎡
施 工 鹿島建設、箱根植木(植栽)
竣 工 2024年